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この記事に掲載しているOpenWrtの設定方法は執筆時点で最新のOpenWrt 25.12.0に基づいています。 過去のOpenWrtではこの記事の内容が当てはまらないかもしれません。予めご了承ください。
この記事ではOpenWrt入門のはじめとして、公式GitHubリポジトリからOpenWrt SDKをダウンロードし、 専用ビルドシステムであるbuildrootでファームウェアイメージを作成、インストールしてみます。
今回は例として、Raspberry Pi3B用のOpenWrtファームウェアイメージを作成します。
それでは、行ってみます。
この記事は以下の環境で実施した結果を元に作成しています。
※今回はOpenWrtをRaspberry Pi3Bにインストールしていますが、基本的な設定はどのデバイスでも共通です。
また、記事内で紹介するコンソール表記は次の通りです
user:~/openwrt$ command
OpenWrt SDKは公式のGitHubリポジトリにあります。
そのため、まずはGitコマンドでリポジトリをクローンします。
今回はGitコマンドを使用してユーザーのホームディレクトリ直下にOpenWrtリポジトリをクローンし、その後でOpenWrt 25.12.0のタグへ切り替えます。
kamo@kamo:~$ git clone https://github.com/openwrt/openwrt.git kamo@kamo:~$ cd openwrt kamo@kamo:~/openwrt$ git checkout v25.12.0
結果はこんな感じになりますね。
たくさんのディレクトリやファイルが存在することが分かります。 これらはOpenWrtに必要なビルド設定やアプリケーションのパッケージ情報などを含んだものです。
主にOpenWrtのビルドシステムであるbuildrootが読み込んでファームウェアイメージを作成するために必要となります。 もちろん、buildroot本体もこの中にあります。
以上から、このディレクトリがbuildrootのルートディレクトリとなります。
この後説明するbuildrootへの操作は全てこの階層(openwrtディレクトリ直下)で実施する必要があります。
今回はv25.12.0を使っていますが、OpenWrtはgit checkoutで任意のタグへ切り替えてビルドできます。 clone直後にgit tagでタグ一覧を確認し、使いたいバージョンをcheckoutすればOKです。
kamo@kamo:~/openwrt$ git tag
例えば、現在のタグ一覧を見ると次のようなバージョンが確認できます。
kamo@kamo:~/openwrt$ git checkout v23.05.6
kamo@kamo:~/openwrt$ git checkout v24.10.5
kamo@kamo:~/openwrt$ git checkout v25.12.0
kamo@kamo:~/openwrt$ git checkout v25.12.0-rc5
安定版を使いたいなら通常のリリースタグ、正式版直前の状態を試したいならrcタグを選ぶ形になります。後は、次節に従ってファームウェアイメージを作成してください。
前節では、Gitコマンドを用いて公式GitHubリポジトリからユーザーのホームディレクトリにOpenWrt SDKリポジトリをクローンし、作成されたopenwrtディレクトリの中身を見てみました。
本来であれば、この後はbuildrootを実行させてRaspberry Pi3B用のファームウェアイメージを作りたいところですが、このままでは実行できません。
buildrootを実行するには、依存パッケージのインストールをする必要があります。
依存パッケージのインストールの組み合わせは実行環境OS(Linuxディストリビューション)によって異なります。 ご自身のLinux OSをご確認の上、こちらのページを参考にパッケージをインストールしてみてください。
この記事では実行環境OSとして、ubuntu 24.04 LTS 64bitを使用していますので下記のパッケージをインストールします。 必要パッケージはOpenWrt側で更新されることがありますので、上手く行かない場合は公式サイトの最新情報(上記の青字リンク「こちら」)も確認してください。
kamo@kamo:~$ sudo apt update
kamo@kamo:~$ sudo apt install build-essential clang flex bison g++ gawk gcc-multilib g++-multilib gettext git libncurses5-dev libssl-dev python3-setuptools rsync swig unzip zlib1g-dev file wget
これでbuildrootに必要な準備が整ったはずです。
さっそく、実行してみましょう。
openwrtディレクトリ直下に移動して、ユーザー権限で次のコマンドを実行してください。
※つまり、root権限(sudo付き)で実行しないでください。これ以降も同様です。
kamo@kamo:~/openwrt$ ./scripts/feeds update -a kamo@kamo:~/openwrt$ ./scripts/feeds install -a kamo@kamo:~/openwrt$ make menuconfig
上記の./scripts/feeds update -aはgitリポジトリから関連するパッケージ情報(feed)をダウンロード
する処理ですが、失敗するときがあります。
コンソールにunable to access ~と表示されたら該当パッケージ情報のダウンロードに失敗しています。
この場合、後に続くこの記事の手順が正常にできない可能性があります。
unable to access ~という表示があったら、もう一度./scripts/feeds update -aを
実行してパッケージ情報のダウンロードを完了しましょう。(何回か実施する or 時間を置いてトライすれば行けるはずです。)
正常に実行されると下図のコンフィグ画面のTOPが表示されます。これでbuildrootの実行は成功です。
※ここで「Prerequisite check failed. Use FORCE=1 to override.」と表示されたら、buildrootに必要なパッケージが不足しています。 もう一度、こちらのページを参考にトライしてみてください。
次節では、このbuildrootのコンフィグ画面からターゲットとなるRaspberry Pi3B用の設定をしてファームウェアイメージを作成します。
buildrootのコンフィグ画面ではファームウェアイメージのターゲット設定が出来ます。
今回はRaspberry Pi3B用のファームウェアイメージを作りたいので、そのようにターゲット設定をします。
OpenWrtのサポートページを見ると、 Raspberry PiのターゲットシステムはBCM27xxとしてサポートされているようです。 そして、モデル別のターゲット名(ターゲットファミリ)は以下の表の通りになっています。
| モデル | ターゲット名 |
|---|---|
| Raspberry Pi1 | BCM2708 |
| Raspberry Pi2 | BCM2709 |
| Raspberry Pi3 | BCM2710 |
| Raspberry Pi4 | BCM2711 |
| Raspberry Pi5 | BCM2712 |
今回はRaspberry Pi 3Bがターゲットですのでbcm2710を指定する必要があります。
それでは、実際に設定をしていきましょう。
はじめに、先ほど掲載したコンフィグ画面TOPの最上部にあるTarget Systemを選択します。
すると、次の画面が表示されますので、今回のターゲットシステム(BCM27xx)を選択します。
選択が終わったらTOP画面に戻り、次はSubtargetを開きます。 ここでは、Raspberry Pi3Bのターゲットファミリであるbcm2710を指定します。
これで、ファームウェアイメージを作るための最低限の設定はできたはずです。
確認のため、Target Profile画面を開きましょう。
今までの設定が正常に反映されていれば、Raspberry Piのプロファイルにチェックが入っています。
以上により、buildrootのターゲットデバイス設定は終了です。最後に、WebUIのLuCIを選択して設定を完了しましょう。
LuCIはコンフィグ画面TOPに表示されている項目からLuCI > Collections > luciで指定できます。
「luci」にチェックを入れたら、Exitボタンでコンフィグ画面を閉じましょう。 設定をセーブしていない場合は、セーブ確認のダイアログが表示されますのでYESを選択してください。
これで、ターミナルコンソールにユーザー操作が戻ってきます。
後は下記のMakeコマンドを実行すればファームウェアイメージのビルドが開始されます。
さっそくやってみましょう。
注意その1:初回ビルドは以下のように、makeコマンドのオプションを-j1としてください。2回目以降のビルドは下の補足に従って変更してもOKです。
注意その2:お使いのPC環境により、初回ビルドは長時間(1~2h)掛かる場合があります。
kamo@kamo:~/openwrt$ make -j1 V=s
補足:makeコマンドの-jはCPUコア数そのものではなく、同時実行するジョブ数の指定です。
ちなみに、この記事では元々-jはジョブではなく、コア数のことだと書いていました。普通に勘違いしていました。
よく使われる目安は-j$(nproc)や-j$((nproc+1))です。
ただし、環境によっては重くなって逆に遅くなることもあります。その場合は-j1や-j2に下げて実行してください。
ファームウェアイメージのビルドが完了すると、openwrtディレクトリに新たなディレクトリ・ファイルが追加されます。
そして、これら追加ディレクトリの1つであるbinディレクトリに作成したファームウェアイメージが格納されます。
今回の場合では、bin/targets/BCM27xx/bcm2710の中にファーウェアイメージがあるので見てます。
すると、4つのファームウェアイメージが格納されていることが確認できます。
これらは次の表に示す形式のファームウェアイメージです。
| イメージファイル名 | フォーマット | 用途 |
|---|---|---|
| openwrt-BCM27xx-bcm2710-rpi-3-ext4-factory.img.gz | ext4 | フルインストール用 |
| openwrt-BCM27xx-bcm2710-rpi-3-ext4-sysupgrade.img.gz | ext4 | アップデート用 |
| openwrt-BCM27xx-bcm2710-rpi-3-squashfs-factory.img.gz | squashfs | フルインストール用 |
| openwrt-BCM27xx-bcm2710-rpi-3-squashfs-sysupgrade.img.gz | squashfs | アップデート用 |
つまり、今回は2つのファイルフォーマット(ext4、squashfs)別にフルインストール用とアップデート用のイメージファイルができたことになります。
イメージファイルのフォーマット指定はbuildrootのコンフィグ<Target Image>から変更が可能です。 今回はデフォルト設定のままビルドしたので、結果として上記4つのイメージファイルが出来ました。
ということで、ファームウェアイメージが無事作れましたので、後はメディアに書き込めばOKです。
今回はopenwrt-BCM27xx-bcm2710-rpi-3-ext4-factory.img.gzをMicroSDカードに書き込んでみます。
ファームウェアイメージをメディアに書き込むツールとして今回はRaspberry Pi Imagerを使用します。
これはRaspberry Pi公式サイトが配布しているRaspberry Pi専用書き込みツールです。
Ubuntu・Mac OS・Windows版があります。
今回はUbuntu版のRaspberry Pi Imagerを使ってみましょう。
次のコマンドでインストールして起動します。
kamo@kamo:~$ sudo apt install rpi-imager kamo@kamo:~$ rpi-imager
Raspberry Pi Imagerのメイン画面が表示されるはずです。
CHOOSE OSボタン->USE CUSTOMボタンを押して、openwrt-BCM27xx-bcm2710-rpi-3-ext4-factory.img.gzを選択しましょう。
こんな感じですね。
後は、CHOOSE STORAGEボタンでメディアを選択します。
今回はMicroSDカードを選択します。
最後にWRITEボタンを押して、書き込みを開始しましょう。
書き込みが完了したら、MicroSDカードをRaspberry Pi3Bに差し込んで起動します。
OpenWrtのIPアドレス・ユーザーID/パスワードの初期設定は下記のようになっています。
| IPアドレス | ユーザーID | パスワード |
|---|---|---|
| 192.168.1.1 | root | なし |
作業用PCとRaspberry Pi3BをLANケーブルで繋ぎ、次のコマンドでSSH接続を試みます。
kamo@kamo:~$ ssh 192.168.1.1 -l root
成功するとOpenWrtのコンソール画面が表示されます。
これで、Raspberry Pi3BへのOpenWrtインストールは完了です。
今回はOpenWrt SDKのダウンロードからファームウェアイメージの作成、そしてインストールまでをやってみました。
結果として、Raspberry Pi3B(OpenWrtデバイス)を動かすところまで行けましたが、無線LANアクセスポイント(AP)やルーターとして運用するには追加設定が必要です。
ということで、次回はOpenWrtのUCIコンフィグレーションファイルをUCIコマンドによって変更し、ネットワーク・Wi-Fi通信ができるようにしてみます。
絶対ではありませんが、OpenWrtデバイスを弄る際に便利なのがホストPCとのUART接続によるコンソールログインです。
UART接続でOpenWrtのコンソールにログインできれば、ネットワーク設定などをミスってもOpenWrtデバイスに対する操作を続行できます。 (通常、OpenWrtはユーザーインタフェースをネットワーク通信のみで提供しますので、ネットワークに問題が発生すると操作できなくなります)
UART接続にはシリアルコンバーター(USB to TTL)と呼ばれる機材が必要ですが、OpenWrtの中身を深く弄りたい場合は利用をおススメします。 特にネットワーク設定を試行錯誤で弄りたいときはなおさらです。
UART接続の方法は【第9回】OpenWrt開発入門 UART接続によるコンソールログイン方法の紹介を参照してみてください。
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